複数の金融機関等の口座情報を一つの画面に一括表示するサービス。ユーザーが複数の金融機関等に持つ口座残高や入出金履歴等の取引情報について、それぞれの金融機関に個々に確認しなくても一度に把握できる。利用するアグリゲーター(サービス提供会社)によって情報取得の対象は異なるが、一般には預金や証券、保険、クレジットカード等である。
(19年4月26日現在)
ビジネスの拡大に焦点を当て、期間限定である程度成長したベンチャー企業やスタートアップ企業の成長を一気に加速させる企業・団体のこと。ベンチャーキャピタルよりも少ない金額での資金投資を行い、企業の自由度を確保したまま支援するのが特徴。米国シリコンバレーのY-Combinatorが有名(過去にDropboxやAirbnbを輩出)。大手企業などのアクセラレーターが公募した企業の中から選抜したスタートアップ企業の成長をサポートし、成長スピードを加速させ、共に事業の成功を目指すことをアクセラレータープログラムと呼ぶ。アクセラレータープログラムは選考通過が非常に難しく、応募総数に対する通過割合は3~5%程度と言われている。アクセラレーターは選考を通過した企業に対して資金援助や事業のノウハウなどのサポートをすることで、ビジネスを短期的に拡大することを目指す。
(19年7月12日現在)
アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank、以下AIIB)は、中国主導で2015年12月に発足し16年1月に開業した国際開発金融機関(本部:北京、初代総裁:金立群(Jin Liqun)、授権資本:1,000億ドル<うち中国が297.8億ドルで最大>)。
AIIB創設の目的について、設立協定は①インフラ設備及びその他生産性分野への投資によって、アジア地域において持続可能な経済成長を促進し、富を創出し、インフラの相互接続を改善すること、②多国間・個別国の開発機関と密接に協力し、開発課題の解決に向けて地域協力及びパートナーシップ関係を推進することと定めている。
創立時の加盟国は57か国であり、21年12月末時点では105か国・地域が加盟している。20年に批准された投資総額は99.8億ドル、プロジェクト数は45であり、20年中の実行額は62.3億ドルとなった。
G7のうち日本とアメリカは参加していない。なお、1966年に設立されたアジア開発銀行(Asian Development Bank)には67か国・地域が加盟している。
直近では、21年から30年までの10年間の戦略において、①グリーンインフラ、②相互接続および地域間協力、③科学技術に即したインフラ、④民間資本の調達の4つが重点分野と位置付けられている。このうち、特にグリーンファイナンスの分野については、2025年までにAIIBの総融資総額に占める気候変動関連融資の割合を、承認済プロジェクトベースで50%に引き上げることが発表された。
(参考)
AIIB公式サイト(https://www.aiib.org/en/index.html)
(2022年1月11日現在)
89年11月、オーストラリアのホーク首相の提唱で創設された経済協力の枠組みである。日本や米国をはじめアジア太平洋地域の21か国/地域が参加している(常設事務局はシンガポール)。アジア・太平洋地域における持続可能な成長と繁栄に向け、貿易・投資の自由化・円滑化、地域経済統合の推進、経済・技術協力の促進などに取り組んでいる。首脳会議では、域内の課題にとどまらず、テロ問題等、国際社会全体の課題についても協議している。
20年11月、「ボゴール宣言(94年採択)」に代わる新しい目標として「プトラジャヤ・ビジョン2040」を採択した。貿易・投資の自由化、デジタル経済とイノベ―ション、持続的で包摂的な成長を柱として「2040年までに、開かれた、ダイナミックで、強靱(きょうじん)かつ平和なアジア太平洋共同体とする」との理念を掲げている。
<APEC 参加国/地域>
(出所)外務省ウェブサイト
(22年3月8日現在)
ASEAN経済共同体(ASEAN Economic Community 以下AEC)は、ASEAN域内の単一市場・生産拠点の統合を目的としており、ヒト・モノ・カネの移動の自由度を高めるための重要なマイルストーンとして、15年に発足した。
03年の第9回ASEAN首脳会議で採択された「第二ASEAN協和宣言」のなかで創設計画が明らかとなり、04年から発足に向け行動計画が開始された。08年には、「AEC Blueprint 2015」により、15年までの目標や実施スケジュールが示され、15年11月にASEAN10ヵ国(インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス)がAEC発足宣言に調印し、同12月末に発足した。
「AEC Blueprint 2015」では、①単一の市場と生産基地の形成、②競争力のある経済地域の創出、③公平な経済発展、④グローバルな経済への統合という4つの目標を掲げられた。15年11月のAECの活動の進捗状況を評価するレポート「ASEAN Economic Community 2015 progress and Key Achievements」によると、「AEC2015」の実施率は506項目中の469項目達成で92.7%であった。
15年11月に採択された「AEC Blueprint 2025」は、①高度に統合されかつ結束した経済、②競争力のある革新的でダイナミックなASEAN、③高度化した連結性と分野別協力、④強靭で包括的、人間本位、人間中心のASEAN、⑤グローバルASEANという5つの戦略的な目標が掲げられ、AEC2015実施中に生じた課題等を踏まえた内容となっている。
(18年9月12日現在)
アフリカ連合(AU)が掲げる「アジェンダ2063」の取組みの一つで、物品およびサービスの単一市場の創設、資本や人の自由な移動および投資促進等を目的とする。AU全加盟国・地域が参加すれば、GDP3.4兆ドル・人口12億人の巨大FTAとなる。
21年1月1日、AUはAfCFTAの運用開始を宣言したが関税撤廃に向けた実務面での交渉は現在も続けられ、進捗は極めて遅い。同月時点で原産地規則の交渉が完了した(図表1)。AU加盟55か国・地域中AfCFTAに参加していないのはエリトリア1か国のみである(図表2)。なお、22年10月9日時点での未批准国はベナン、ボツワナ、コモロ、リビア、リベリア、マダガスカル、モザンビーク、ソマリア、南スーダン、スーダンの10か国。
[図表 1] AfCFTA交渉進捗状況
[図表 2] AfCFTA年表
(22年10月11日現在、担当:アフリカ部 曽山)
アフリカ連合(African Union;AU)は1963年に発足したアフリカ統一機構(Organization of African Unity;OAU)を前身とし、1999年の「シルテ宣言*1」を受けて2002年に改組発足した。
アフリカ全55の国・地域*2が加盟しており、本部はエチオピア首都のアディス・アベバ。最高意思決定機関は「総会」(首脳会議)で年一回開催されており、その下に加盟国閣僚で構成される閣僚執行理事会や政策執行機関のAU委員会が設置されている。
総会議長は任期1年、通常1月に開催される総会で加盟国の3分の2以上の得票で選出される。
活動目的はアフリカ諸国・民間部門間の一層の統一・連帯の達成、アフリカの政治・経済・社会統合の加速化、アフリカの平和・安全保障・安定の促進、民主主義の原則と国民参加・良い統治の促進、持続可能な経済・社会・文化開発の促進等である。
*1 シルテ宣言
1999年9月、リビアのシルテで開催されたOAUの第4回首脳会議で採択された決議。
*2 加盟国
アルジェリア、アンゴラ、ウガンダ、エジプト、エチオピア、エリトリア、ガーナ、
カーボヴェルデ、ガボン、カメルーン、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、
コートジボワール、コモロ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、サントメ・プリンシペ、
ザンビア、シエラレオネ、ジブチ、ジンバブエ、スーダン、エスワティニ、セーシェル、赤道ギニア、セネガル、ソマリア、タンザニア、チャド、中央アフリカ、チュニジア、トーゴ、ナイジェリア、ナミビア、ニジェール、ブルキナファソ、ブルンジ、ベナン、ボツワナ、マダガスカル、マラウイ、マリ、南アフリカ、南スーダン、モザンビーク、モーリシャス、モーリタニア、モロッコ、リビア、リベリア、ルワンダ、レソト、
西サハラ(我が国未承認)
(参考)
本邦外務省(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/oau/oau.html)
AU公式サイト(https://au.int/en)
(22年11月8日現在、担当:アフリカ部 中居)
「アラブの春」(英語表記:Arab Spring)は、2010年末からアラブ諸国に拡がった一連の民主化運動の総称である。チュニジアで2010年12月に失業中の青年が警察に抗議して焼身自殺したのをきっかけとして反政府運動が高まり、北アフリカから中東地域にまで波及した。チュニジア、エジプト、リビア、イエメンでは、民衆による大規模なデモにより長期独裁政権が崩壊し、モロッコなどでは憲法改正が実現した。他方で、アルジェリア、サウジアラビアなどでは体制転換に至らなかった。またシリアでは、内戦がなおも続いている。「アラブの春」の大きな特徴は、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を使い一般民衆がデモの呼びかけを行い、情報の共有を図ったことで、これにより大規模かつ国境を越える民主化運動のうねりが生まれた。
(18年7月26日現在)
アラブ諸国間の協力強化と調整を目的として結成された地域組織。45年にエジプト、イラク、サウジアラビア、イエメン、ヨルダン、シリア、レバノンの7か国で結成されたが、その後リビア、スーダン、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、モーリタニア、ソマリア、ジブチ、クウェート、バーレーン、カタール、オマーン、アラブ首長国連邦、コモロ、パレスチナ解放機構が加盟した。現在は21か国と1機構が加盟。(18年12月7日現在)
14年9月にイランが支援するシーア派武装勢力ホーシーは、サーレハ元大統領派などとともにイエメンの首都サヌアを制圧した。ハーディ大統領は軟禁され、その後辞任した。15年2月になり、ホーシーが政権掌握を宣言すると、ハーディ大統領派(以下、暫定政権)は南部アデンに拠点を移して対抗、ハーディ大統領は辞意を撤回した。その後、ジハード主義者のアラビア半島のアルカイダ(AQAP)」を交えた3つ巴の内戦となった。アラブ諸国の大半や米国は、暫定政権を正式な政権として承認している。
ホーシーの南部侵攻が進むなか、15年3月にイエメン政府を支持するサウジアラビア(以下、サウジ)は、オマーンを除くGCC諸国とともにホーシーに対する空爆を開始した。背景には、イランの影響を受けるホーシーの勢力が伸張し、中東におけるイランの影響力が拡大することをサウジが懸念したことがある。
現在のイエメン紛争は「ホーシー陣営vs暫定政権陣営」の構図となっているが、各陣営とも内部対立があった(図表)。ホーシー陣営では、17年12月にサウジなどへの協力の意思を示したサーレハ元大統領がホーシーに殺害された。一方で暫定政権陣営では、18~20年に南部分離派(STC)(UAEが支援)が暫定政権(サウジが支援)と対立し、戦闘を繰り返してきた。サウジとUAEが協調して、暫定政権とSTCの関係改善を働きかけた結果、暫定政権とSTCは19年11月に権力分担協定を締結した。その後協議が決裂する場面もあったが、20年12月18日に暫定政権とSTCが共同で新内閣を組閣した。
また、サウジ政府はホーシーとの停戦を模索している様子である。19年11月には、オマーン仲介のもとホーシーとの停戦協議を行なった。ただし21年1月時点でも、ホーシーによるサウジ攻撃や、サウジ等によるホーシー支配地域への空爆が続いており、停戦の兆しはみられない。
長引く紛争の結果、イエメンでは飢餓、衛生環境の悪化、住民が戦闘に巻き込まれるなどが大きな問題となっている。一方、サウジとしても軍事費や人道支援費が財政の負担となっている。
(21年1月29日現在)
図表]イエメン紛争の関係図
(出所)各種報道よりJCIF作成
イスラム金融とは、イスラム法(シャリーア)に沿った金融取引の総称。イスラム法では利子(リバー)の受け払いが禁止され、豚やアルコール、タバコをはじめとしたイスラム教の禁制品を扱う事業体に対しても金融の対象とすることが禁じられている。イスラム金融は、転売契約やリース契約を応用し実物取引を介してイスラム法に適合した金融の仕組みが構築されている。
(19年9月24日現在)
「イスラム国」(英語表記:Islamic State、IS)はシリア~イラクを主な活動拠点とするスンニ派のイスラム過激派組織。「ISIS」(イラクとシリアのイスラム国)、「ISIL」(イラクとレバントのイスラム国)と呼ばれることもある。14年6月に最高指導者バグダーディーがイスラム国家の樹立を宣言した(これまで同組織を国家承認した国家はない)。同指導者(19年10月に米国の特殊作戦により死亡)はカリフ(預言者ムハンマドの正統な後継者)を自称し、世界中のスンニ派イスラム教徒に忠誠を求めていた。14年にはシリア北東部およびイラク北西部に渡る広範な地域を制圧し、約800万人の住民を支配した。もっとも米軍主導の有志連合軍およびクルド人からなる民兵組織が、17年7月にはイラク北部の都市モスルを、10月には同組織が「首都」と称したシリア北部の都市ラッカを奪還し、同組織は同年末までには両国における支配地域の大半を失った。但しISは21年2月にイラクのバグダッドで100人以上の死傷者をだす自爆テロを起こすなど、その後もイラク各地に潜伏し、散発的に攻撃を行っている。また、同組織に忠誠を誓った分派組織が西アフリカのサヘル地域、エジプトのシナイ半島、南アジア、東南アジアなど世界各地で活動を続けている。
(21年2月20日現在)
一国二制度(One Country, Two Systems)
中国の「特別行政区」(Special Administrative Region、SAR)である香港とマカオの統治原則。両地域においては中国本土の社会主義を適用せず、一つの国(中国)のなかに二つの制度(社会主義と資本主義)が併存している状態を指す。
英国から中国への香港返還を約した1984年の英中共同声明では、中国本土の社会主義を香港には適用せず従来の資本主義体制や生活様式を返還後50年(2047年まで)維持すると合意した。
上記声明に基づき、中国全国人民代表大会は97年7月1日の香港返還に先立って「香港特別行政区基本法(Basic Law)」を制定した。前文では「香港に対する主権行使の回復にあたっては、中華人民共和国憲法第31条(※)の規定に基づき香港特別行政区を設置するとともに、『一国二制度』の方針に基づき香港においては社会主義の制度と政策を実施しない」との方針が明記されている。
「基本法」は香港に行政権や立法権、司法権を付与し高度な自治を保障してきた。しかし、中国政府は20年6月に香港での反政府活動を禁止する「香港国家安全維持法」を制定し香港に対する統制を強めており「一国二制度」は揺らいでいる。これに対して米国、オーストラリア、カナダ、英国は香港に関する共同声明を発表し、中国政府による「国家安全法」の制定は、国連に登録され法的拘束力のある英中共同声明に対する明らかな違反行為であるとの懸念を示している。同懸念に対し中国外務省は「中国政府は英中共同声明ではなく、中華人民共和国憲法と香港基本法に基づいて香港を統治している。いかなる国も英中共同声明を根拠に香港に干渉することはできない」と抗議している。
なお、ポルトガルから中国へのマカオ返還(1999年12月20日)に際しても「基本法」に基づく「一国二制度」による自治(2049年まで)が認められている。
(※)同条は「国家は必要がある場合には特別行政区を設立することができる。特別行政区において実行する制度は、具体的状況に照らして、全国人民代表大会が法律により規定する」と定めている。
(参考)
「英中共同声明」(1984年12月)
「香港特別行政区基本法(Basic Law)」(1990年4月制定、1997年7月施行開始)
「香港に関する共同声明」(2020年5月)
(2021年8月12日現在)
中国の習近平(Xi Jinping)国家主席が2013年から提唱している広域経済圏構想(英語表記は「Belt and Road Initiative、BRI」)。陸路で中央アジアを経て欧州に続く「シルクロード経済ベルト(一帯)」と、南シナ海からインド洋を通り欧州へ向かう「21世紀海上シルクロード(一路)」を合わせて「一帯一路」と呼ぶ[図表1]。中国と関係国の二国間・多国間メカニズムに依拠し、沿線諸国との経済パートナーシップを積極的に展開するとともに、相互の政治的信頼、経済的統合、文化的寛容を備えた共同体の構築を目指している。
15年に国家発展改革委員会・外交部・商務部が連名で発表した「シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロードの共同建設を推し進めるビジョンと行動」により、構想の具体的な内容が明らかになった。同文書は、参加国との協力分野について①政策協調(政府間協力)、②インフラ整備、③貿易・投資の自由化、④金融協力、⑤民間交流を挙げている。
本構想におけるインフラ建設を資金面から支援するため、シルクロード基金(Silk Road Fund)やアジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank、AIIB)、BRICSの5か国が主体となる新開発銀行(New Development Bank、NDB)などが中国主導で設立された。
22年2月6日時点において、中国は本構想について148か国、32の国際機関と合意文書を締結しており加盟国は世界中に広がっている[図表2]。日本は本構想への参加表明はしていない。
「一帯一路」参加国向けの対外投資については、途上国に過剰投資を行い返済不能に陥らせる「債務の罠」や、中国主導で整備された港湾施設などが軍事利用される恐れがあるとの懸念が示されている。21年6月に開催されたG7サミットでは、「一帯一路」に対抗し途上国のインフラ整備を支援するための新たな構想を立ち上げることが合意されたほか、EUも21年12月に「グローバル・ゲートウェイ構想」を発表した。民主主義、法の支配や人権といった考え方を尊重し、高い透明性と良質なガバナンスに基づく持続可能なインフラ支援を推進する方針を明確にした。
(参考)中国政府「Belt and Road Portal」(https://www.yidaiyilu.gov.cn/index.htm)